命にふれる

飼育員

みなさん、こんにちは!

今回のブログのテーマは、動物とのふれあいについて書きたいと思います。

さて、当園のふれあい広場は、2018年の4月を機にリニューアルしたのをご存知でしょうか?

私が入った当初は、毎日「モルモットの抱っこ」のイベントを行っていて、 平日は少し穏やかな時間もありましたが、土日になるとたくさんのお客様が来園され、抱っこする日もありました。そんな日は、モルモットたちもストレスを感じているように見えました。モルモットたちの気持ちを直接聞くことはできないですし、日常的にストレスを計れたりできればいいのですが、それは現実的ではありません(動物のストレスは、尿や便・血中から調べることもできますが、それにはいろいろな条件をクリアしなければいけなかったり、調べること自体がストレスになったりと難しいのです)。

また、実際抱っこしている参加者の子の会話に注目してみると「これなに?うさぎの赤ちゃん?」「どうやって抱っこすればいいの?」のような疑問から、「この子(モルモット)やだ!あっちの子がよかった~!」などのような発言もありました。こうなったときは、飼育員の出番です☆動物園には「4つの役割」があるといわれていて、そのなかの1つに「教育の場」というものがあります。飼育員は、動物の飼育を行うだけではなく、野生動物との共存を志向し、生物多様性の保全と持続可能な社会構築に貢献する人を育てる役割があります。

ということで、私は、子どもたちとの会話を通して、子供たちの興味を引き出し、少しでも動物たちに愛着を持ってもらいたいと思っています。「これは、ウサギの赤ちゃんじゃなくて、モルモットという動物だよ」「しっかり片方の手でカゴを持って、抱っこしてあげてね」「この子、よく見ると目が赤いよ、あの子はどうかな?もっとこの子のこともみてほしいな」などと声掛けが大事になります。しかし、実際は、「これはウサギの赤ちゃんじゃなくてね、、、ピピピピピ(抱っこ終了のタイマーの音)、、、、、、はい、じゃあ、次の子のお時間になりますね!」というような感じになってしまい、とても歯がゆい思いをしていました。そう、圧倒的に対話をする時間が短かったです。当時は、子どもたちが抱っこしている間に、次の子を案内して、ひざかけ用のタオルを渡して、ということをやっているとあっという間に時間は過ぎていきました。日々、たくさんのこどもたちがモルモットを抱っこして、嬉しそう帰っていく姿を見ることは飼育員としてうれしい反面、「本当にこれでいいのかな?」という思いを抱えていました。

そこで、「テンジクネズミのなかよし教室」が誕生したのです。まずは、今まで、愛称と呼ばれていたモルモットから、正式な和名である「テンジクネズミ」と呼び方を変えてみました。テンジクネズミってなに?というところから、会話のきっかけづくりをしたかったからです。

そして、内容も、ただ抱っこするだけではなく、テンジクネズミ1頭1頭に名前があることや、テンジクネズミの生態などをガイドして、そのあとに実際にテンジクネズミの抱っこをすることにしました。ガイドについても、ある程度の内容は決めていたのですが、職員によって話し方や内容が少しずつ違っていて、職員それぞれの個性が出ているので、何度も楽しめる内容になっています。このリニューアルの結果、私たちも参加者の方と十分に時間を共有することができましたし、テンジクネズミにとっても、平日の抱っこをお休みさせてもらうことで負担が減ったように思います。

ちなみに、のんほいパークには、60頭近くのテンジクネズミがいますが、ふれあい広場に出る子たちは毎週メンバーチェンジを行っていて、休園日の月曜日に対象の子の体重を計り、ボディチェックをして体調に問題がなければふれあい広場に出すようにしています。動物園でのふれあいイベントの歴史は古く、長い戦争のあと、その戦争への反省から、子どもたちの教育に力をいれなければいけないと、上野動物園にできた「子ども動物園」が始まりだといわれています。私たち日本人にとって、動物園での動物のふれあいは当たり前になっていますが、時代は常に変化し、「ふれあい」に対する考え方も変わってきています。これからも、私たちは、動物福祉に配慮したうえで、参加者の方に最大限の教育効果が得られるイベント作りを考え続けなければいけないと思っていますし、実際、これはのんほいパークの課題だけではなく、日本全国の動物園・水族館のふれあいイベントの担当者が抱える課題でもあります。

長々書いてしまいましたが、もちろん動物たちに触るという体験は、子供たちにとってとても感動的な体験です。これからは、「触る」という感覚の他にも、ぜひ「見る・聞く・嗅ぐ」の3つの感覚も使って動物園を楽しんでほしいなぁと思います。

ある日、遠足の子どもたちを連れた先生とこんなやり取りがありました。なかよし牧場に入ってきた子どもたちが、つぎつぎに「くさ~」「ほんとだ、ウンチのにおいがする~」「ヤギのにおい?」と話していました。たまたま近くを通った私が、先生と目が合うと、もの凄く申し訳なさそうな顔で、「すみません。みんなもそんなこと言わないの!」とおっしゃっていました。なかよし牧場は、家畜を中心としたエリアでほかの野生動物のエリアに比べると、動物との距離は近く、動物のにおいがよく感じられます。そのときは、「全然大丈夫ですよ~」と軽く挨拶した程度でしたが、私としては、よっしゃ!動物園を感じてくれた!!と内心嬉しく思っていました。それから、当園のロバやヒツジも結構大きな声で鳴くのですが、みなさんをびっくりさせたいから大声を出しているのではなく、それが本来の声の大きさです。ぜひ動物園に来たら、たくさんの感覚を使って、動物を感じて楽しんでください♪

なかよし牧場担当より