前途多難?!

飼育員

5月6月の休園日に、オランウータンのペアリングを行いました。前回ペアリングをした一昨年の秋は、オスのウータンがメスのウランにかみつき、その後ウランが怖がってしまい一緒になれず、約2年ぶりのペアリングとなりました。

 

相変わらず臆病な性格のウータンですが、(ウータンがウランにかみついたのは、ウランのことが怖かったんです…。あんなに大きいのに…。)今までよりフランジが大きくなり、ロングコールも出来るようになったので、前回より良い結果になるのでは…と期待していました。

 

(フランジとは、自分が強いオスだと自覚すると発達する頬のでっぱりの事で、ロングコールとはフランジのあるオスだけが発する、縄張りを主張したり、メスを呼び寄せる声のことです。臆病なウータンがロングコール出来るようになったことは、感動的にすごいことなんです!)

 

まずは同じ空間に一緒にいられることを目標に!と1人はウータンに、1人はウランに餌をあげられる場所につき、ウランが先に出ている放飼場にウータンを出しました。

 

ウータンは、出た途端に「キススウィーク」といって警戒や不快感を表現する音を出して怒っています。気を紛らわせようと、普段は食べないビワなどのごちそうを見せますが、あの食いしん坊のウータンが見向きもせずに怒っています。

 

ウランはウータンに興味を持って近付きますが、ウータンが離れるので、2頭の距離はなかなか縮まりません。そんな状態で30分程たち、ウランは前回程グイグイ行かないし、5分で終了した前回よりは良い感じかなーと思っていたら、接近し過ぎたウランにウータンが怒り、ウランが頭を叩かれてしまいました。痛かったのとビックリしたウランは大急ぎで部屋に帰り、1回目のペアリングは終了となりました。

 

その後3回、計4回のペアリングを行ったのですが、好意を持って近付いて行くウランをウータンが受け入れることはなく、何度かたたかれたウランは、ウータンを怖がるようになってしまいました。 当初から、暑い時期のペアリングは避ける予定だったことと、このままではお互いの事がますます怖くなりマイナスとなってしまうので、ペアリングは一旦終了となりました。

 

毎回、終了すると頭をかかえてしまいましたが、これまでウランを怖がっていたウータンが、3回目では逆にウランを追いかける場面もあり、臆病なウータンが自信を持てるようになったことは、大きな進歩だと思っています。 オランウータンは、気持ちの変化でフランジの発達がみられるように、精神面が繁殖行動に大きく影響します。これまでも、ウータンに自信をつけて欲しいと褒めて褒めて接して来ましたが、これまで以上に褒めちぎってウータンにもっと自信がつくように接していきたいと思っています。

 

秋のペアリングに向けて、現在は寝室の配置換えに奮闘中です。寝室は4部屋あり、現在使っている2部屋ずつではお互いの姿が全く見えないので、姿の見える2部屋ずつにしたいのですが、これがまた、一筋縄ではいきません…。

 

臆病なウータンが、変化になかなかついて行けず、まだ時間がかかりそうですが、夜間早朝毎日お互いの顔が見られるようになれば、秋のペアリングで良い変化が見られることを信じて、少しずつ前進出来ればと思います。

 

是非、ウータンとウランに会いに動物園にお越し下さい!

 

 

オランウータンなど担当