繁殖余話

獣医師

みなさんはライオンのこどもたちをもうご覧いただけましたか?
やんちゃで愛らしい様子をご覧いただけるのは今だけですので、
是非当園にお越しいただければと思います。

今だけですよ!

 

さて、動物園では動物を「増やす」ことの方に注目がいきがちですが、
同じように動物を「増やさない」こともとても重要で、私たちは日々その課題に取り組んでいます。
今回はそのことについて少しお話させていただきます。

動物を増やさない取り組みを私たちは「繁殖抑制」と呼んでいます。
「なぜ繁殖を抑制する必要があるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
これには理由があります。

たとえば飼育スペースの問題。
残念ながら動物を飼育するスペースは限られており、それをオーバーしてしまうと、
それぞれの動物の生活水準を下げてしまうことになってしまいます。
これは動物福祉の観点から望ましいことではありません。
ほかにも、近親交配などのリスクの高い繁殖を防ぐことなどがあげられます。

このような理由から行われている「繁殖抑制」ですが、
その手段としてはいくつかの選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

・オスとメスを分ける
これが一番シンプルで柔軟性の高い選択肢ですが、スペースの都合などで実施できないこともあります。

別居中の方々

 

・去勢(避妊)手術をする
確実な手段ではありますが、個体に多かれ少なかれ負担がかかることや、
一度やってしまうと元には戻せないことが難点です。
当園ではテンジクネズミやウサギなど一部の動物でのみ実施しています。

実は彼も去勢済

 

・薬でホルモンの動きを止める
手術するよりも個体への負担が少なく、理屈上は薬を止めれば再び繁殖ができるなどの利点があります。
ただ、まだまだ分かっていないことも多く、大学や他の動物園・水族館と一緒に研究している最中です。

お薬いろいろ

 

このように、私たちはあの手この手を駆使して動物を増やさないようにも取り組んでいます。
動物園にお越しの際には、そのことについてもたまに思い出していただけると幸いです。