鳥たちの緊急事態宣言

飼育員

夏の暑さが和らぎ、昆虫たちの鳴き声が初秋を告げ、過ごしやすくなって“ほっ”とするのもつかの間、動物園は少しピリピリムードが漂います。

秋は、実りの秋、食欲の秋、紅葉など盛りだくさんで素敵な季節、鳥たちにとっては北から南に越冬のために移動する渡りの季節のですが、それがピリピリムードにさせる原因です。

鳥たちは移動とともに鳥インフルエンザウイルスも一緒に運んでくるのです。

鳥インフルエンザとはA型インフルエンザウイルスによる感染症で、そのウイルスは自然界においてはカモ類などの水鳥を中心とした鳥類が腸内に保有しています。中でもニワトリなどの家禽に感染した場合に多く死亡させてしまうものを抗原性鳥インフルエンザといいます。感染した家禽や感染の疑いのある家禽は全て殺処分となります。通常ヒトには感染しませんが、感染した鳥に触るなど濃厚接触した場合など極めてまれに感染し、その症状は咳や発熱、場合によっては死に至ることがあります。

動物園には大きな池があり、毎年多くのカモたちが飛来してきます。ここにはオオハクチョウを放し飼いにしていますが、鳥インフルエンザに感染しないようにカモが飛来する前に隔離施設に移動しなければなりません。池に戻すのは春、カモがいなくなってからになります。

オオハクチョウの移動終えると、鳥インフルエンザ感染のニュースがちらほらと耳に入ります。去年はあまり感染を聞かなかったのですが今年はなんだか多そう。ピリピリ感がさらに高まります。近くで発生すればするほど防疫体制を強固なものにしなければなりません。

オオハクチョウの次はアヒル、ダチョウ、エミューの展示中止、オオハクチョウ同様サブパドックは野鳥の糞が落ちないようにシートで覆います。フンボルトペンギンは防鳥ネットとシートを覆い、さらにクマタカ舎の一部、フクロウの森、オオタカとオシドリがいる野鳥園の一部をシートで覆います。これでとりあえず一安心。昨年はこれで済んだのですが…。

さらにニュースが。和歌山の動物園で発生との知らせ。アヒル、ダチョウ、エミューの殺処分と2週間の閉園。追い打ちをかけて近隣の養鶏場で発生、さらにもう1軒と…。

これはもう緊急事態発令です。園内で発生しないように万全の体制をとらないといけません。急ピッチで強風にあおられながら高所での鳥舎のシート張りを終え、周囲には消石灰をまき、バードエリアの閉鎖、侵入車両の下部全体の噴霧器消毒、すべての鳥舎への出入り時の長靴の履き替えと消毒層による長靴の消毒の徹底を行っています。またバードエリア以外の鳥は観客から離隔距離を置き、殺処分にならないように万全の防疫体制で鳥たちを守っています。ダダただ鳥インフルエンザが発生しないように祈るだけです。

しばらくは一部の鳥を見ることができませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

鳥インフル1

鳥インフル2

鳥インフル3

鳥インフル4

 

鳥インフル5