家畜のおもしろさ  ~動物園という存在~

飼育員

昨年の10月からグループが変わって、なかよし牧場(主にもぐもぐ広場)にいる動物たちを担当しています。

なかよし牧場の動物たちは、ほとんどが「家畜」と言われる動物です。

 

 

家畜とは、教科書的にいうと、

「人間が利用するために繁殖まで含めて生活のすべてを管理し、人間が利用しやすいように姿形を変えたもの」

だそうです。

つまり私たち人間が利用をするために人間に都合よく改良されている動物。

しかし逆に言えば、人間がしっかり管理をしてあげなければ、健康的には生きられない動物だということです。

 

 

野生動物に比べて家畜は、もともと人慣れしていて飼育管理も簡単だろうと思われがちですが、人が手をかけて管理してあげなければいけないことがたくさんあります。

例えば、ウマ、ヒツジ、ヤギは定期的な削蹄が必要。特にウマは放っておくと歩けなくなって生死に関わる。

ミニブタ、ヤギは定期的にブラッシングしたり、テンジクネズミはシャンプーをして、体を清潔にしてあげる必要がある。

ヒツジは年に一回毛刈りをする。毛刈りをしてあげないとずっと伸び続けてしまうので、暑さ、重さだけでなく、糞尿等の汚れで病気になって最悪の場合死んでしまう。

また野生動物よりも感染症など病気の心配も多く、消毒等日々の管理で気をつけることがたくさんあります。

 

人が管理しないといけない動物だからこそ、手を入れたら入れただけ状態が良くなります。

それは今まで半年ちょっと関わっただけでもよく分かりました。

 

 

 

私が主に担当している動物は、ヒツジ、ミニブタ、カピバラ、アヒルで、どの動物も生き物としても全然違うし、とても個性豊かです。

特にミニブタは、非常に頭が良くてびっくりしました。

のんほいパークのミニブタは全部で3頭、みんなメスで、名前はトン、ラン、ルフといいます。

 

 

 

毎朝寝室から出すときには、一番弱いランがなかなか出ることが出来なかったため、一度3頭をそれぞれ小部屋に分けてから、ランから出すようにしました。

それを繰り返すうちに、もう放飼するときには、自分たちが分けられる部屋で待機してくれるようになりました。

 

今までなかなか外に出ないために、水をかけられたり、道具で追われていたランも、自ら率先して外へ出るようになりました。

このやり方に変えたことで、ブタにとっても、管理する人間側にとっても、お互いストレスなく出せるようになりました。

また、ブラッシングが大好きなので、積極的に行ってあげると、自分でお腹をゴロンと出してくれたり、

ブラッシングしながら特に保定なしで爪切りをさせてくれるようにもなりました。

 

 

どんな動物もそうですが、その子のためにやれば、やっただけの反応を返してくれます。

トンは一番賢く、何でもすぐに出来てしまいますが、その分人をすごくよく見て選んだり、嫌なことがあると噛むこともありました。でもなるべくよしよししてあげたら、ほとんど人に対して噛まなくなりました。動物たちに変なレッテルを貼らせないようにすることも、管理する私たちの責任だと思っています。

 

 

 

今所属しているグループは、教育普及も担当しているので、先日新しい教育プログラムを作らせていただきました。そこでも家畜について少し触れています。

動物園では野生動物の方が人気で注目されると思いますが、私たちが今こんなにも豊かに生活できるのは、これら家畜と言われる動物たちが支えてくれているおかげです。

 

みなさんはごはんを食べる時に、「いただきます」と言いますか?

「いただきます」は「命をいただきます」という意味です。

私たちが毎日食べたり、飲んだりしているものは、植物や動物という命をいただいています。

その命に感謝しながら、残さず食べる。

当たり前のことですが、それが出来ないためにフードロスなどの問題がなくなりません。

 

 

 

私は、動物園は、命の大切さを学ぶ場所だと思っています。

だからこそ、綺麗な部分だけ話していてはいけないと思います。

生も死もありのままを伝えるべきだと思うし、動物は年老いたり、病気になってしまっても最期まで自分の命を粗末にすることなく懸命に生き抜いていきます。

そのたくましさ、尊さをぜひ多くの方に知ってほしいです。

 

産まれてきたくても、産まれてこれなかった命もあります。

今私たちが元気に過ごしていることは、当たり前ではないのです。

 

今ではインターネットなどで、色々な動物の姿を簡単に見ることができます。

でも、実際に生きている、動いている姿を、ぜひ見てほしいです。

そしてそこから何でもいいので、何か心に感じるものがあれば、それは何も感じなかった人よりも、すごく豊かな経験ができたのではないかと思います。

 

動物たちの素晴らしい生き方を知って、ぜひ自分にも、周りの命にも、優しくできる人が増えることを願っています。

 

 

もぐもぐ広場担当