だいぶ前の思い出… 

旧飼育ブログ

先日ライオンのメスのオトを呼んだときのこと、「おーい、カヨっー!」って呼んで、それが間違いであることを相方に言われるまで全く気が付かないでいました。

 

 

30年ほど前に飼育係として初めて担当した動物がライオンでした。その時のメスライオンの名前がカヨでした。オスのフレッドと二頭を飼育展示していましたが、若い二頭は新人の私をよく怖がらせくれました。フレッドは収容時にいつも扉の横に隠れていて、覗き窓から外を覗く私の前に突然現れて「ガォー!」と吠えるのです。腹の底から響く咆哮に心臓が口から飛び出るくらいにいつもビックリしていました。もちろん私もいつもやられているわけではなく、心構えをしてその覗き窓から外を覗くのですが、やっぱり吠えられるとその太くて腹の底から響いてくる声に毎回同じようにびっくりしていました。フレッド、カヨはすでにこの世にはいませんが、飼育係として働き始め、野生動物のたくましさや、強さなど教えてくれたこの二頭の事は、今も私の心の中に焼き付いています。

 

去年オスのハヤテが亡くなり、今はメスのオトがその勇姿を見せ、来園されるお客様に喜んで頂いています。高齢ではありますがまだまだ体は筋肉質でガッチリしていて、体から溢れんばかりの高貴な光を放っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

私が飼育係になった以前からこの動物園にいて、今現在も元気な姿を見せている何頭かの動物がいます。

 

アジアゾウのオスのダーナ。ダーナも私が飼育係になった時の最初の担当動物です。ダーナにもよくいじめられました。担当になったとはいえゾウはなかなか新人担当を認めてはくれません。ゾウの担当者は複数です。ダーナには順位を付けられます。もちろん私が一番下です。ダーナの前を通る時には決まって私だけに水をかけてきました。着替えはいつも持っていました。

 

今はもうダーナの担当ではないですが、今も前を通ると水をかけてきそうな素振りをみせます。でも「よしよし、ダーナいい子だなぁ!」と声をかけると優しい顔で見送ってくれます。

 

 

 

 

 

 

 

テナガザルのオスのピッピとメスのアンナ。アンナは可愛い顔をして可愛い声を出し、背中を摩ってくれと檻に背中を寄せてきます。先輩飼育係の真似をして背中を摩ってやります。いきなり反転して私の指を捕まえ、檻の中に引き込み指先に噛みつきます。怪我をするほどには噛みつきませんが、かなりビックリします。噛まれたのはその時だけですが、未遂はその後何度もありました。可愛い顔をして可愛い声を出して背中を寄せてくると、どうしても摩ってあげたくなります。今ではいつまでも気持ちよさそうな顔をして背中を摩らせてくれます。

 

 

 

 

 

 

動物を飼育することはたくさんの苦労があります。しかしそれ以上にたくさんのいい思い出を与えてくれます。また野生動物のたくましさ、それぞれの動物に合った飼育方法。それらは実際に経験してみないと分からないことが沢山ありました。それらのたくさんの思い出は、いつまでも私の心の中から忘れることは無いでしょう。飼育係になって良かったなぁと今改めて思います。